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はじめに
皆さん、こんにちは。八幡平市で地域おこし協力隊をしている赤川です。
シカ(ニホンジカ)は、近年その生息数の増加とともに農作物や森林への被害が深刻化している野生動物のひとつで、八幡平市内でも年々と目撃数が増えています。
特に山間部に隣接する農村地帯では、日常的にシカによる食害や踏み荒らしなどの被害が報告されており、適切な防除対策が必要とされています。
本記事では、シカの生態を踏まえた効果的な防除方法について解説します。
なぜシカ対策が必要なのか
シカは草食性の哺乳類で、主に森林や草地に生息しています。
しかし現在では、人里近くや農地にまで出没し、農作物や植林地に深刻な影響を与えています。
シカの食害は農作物に限らず、苗木や樹皮を食い荒らすことで森林再生を妨げ、自然環境全体への影響も及ぼしています。(主に林業の被害が甚大です)
また、シカは繁殖力が高く、天敵が少ないことから個体数が急激に増加する傾向があります。被害が放置されると、次第に定着して被害が拡大するため、早期の対応が重要です。

シカの生態と行動の特徴
昼行性と群れでの行動
シカは基本的に昼行性で、早朝や夕方に活発に活動します。
また、雌や若い個体は群れを作って行動することが多く、一度被害が出ると複数頭による被害が続くケースがあります。
草食性と嗜好性
シカは完全な草食性で、稲や野菜、果樹の葉、苗木、若木の皮などを好んで食べます。
特に芽や若葉、柔らかい部分を好むため、植えたばかりの作物や新芽が狙われやすく、農家にとっては打撃が大きくなります。
優れた跳躍力と侵入能力
シカは1.5〜2メートル程度の柵を軽々と飛び越える跳躍力を持ち、斜面なども難なく移動します。また、フェンスの隙間や下部をくぐって侵入することもあるため、侵入防止策には細かな工夫が必要です。
シカの防除対策方法
シカによる被害を抑えるためには、侵入を物理的に防ぐと同時に、環境整備によって誘引要因を減らすことがポイントです。
1. 防護柵の設置(物理的バリア)
- シカの侵入を防ぐ最も確実な方法は、十分な高さと強度のある柵やフェンスの設置です。
- 柵の高さは最低でも1.5メートルが推奨され、ネットやワイヤーメッシュを使ったものが一般的です。
- 地面との隙間をなくす、L字型に地面へ折り返すなど、下部からの侵入も防ぐ工夫が必要です。シカは飛び越えて侵入するよりも、くぐって入ることを優先します。
2. 誘因要素の排除(環境整備)
- シカが好む植物や果樹、雑草などが多いと、それが誘引となって侵入を招きます。
- 農地周辺の草刈りを定期的に行い、隠れ場所をなくすことで定着を防ぎます。
- 農作物の残渣や収穫後の放置作物も片付けるようにします。

地域で連携した取り組みが鍵
シカの被害は広範囲に及ぶことが多く、今後、出没件数が増大したとき、個人の対策では限界があります。近隣の皆さんや、自治体と猟友会、地域ぐるみでの防除体制を築くことが効果的です。
- 猟友会の方と交流や市の生涯学習セミナーなどに参加し、情報交換や相談を行う
- 柵や防護ネットの共同設置、資材の共同購入
- 被害状況をマップ化して、重点対策エリアを絞る(被害が広範囲になってしまった場合)
また、シカの捕獲や駆除は鳥獣保護法の規定により、許可を受けた者(八幡平であれば猟友会)が行う必要があります。
無許可での捕獲は違法となるため、被害が深刻なエリアにお住まいの方は八幡平市の農林課に相談してください。
まとめ
シカによる被害は農業・林業・自然環境に広く及ぶ深刻な問題です。しかし、その生態や行動特性を理解し、的確な対策を講じることで、被害の拡大を防ぐことが可能です。
- 物理的防護(柵)で侵入を防ぐ
- 環境整備で誘引を減らす
そして、何よりも自治体と猟友会で連携した地域ぐるみでの取り組みが長期的な効果をもたらします。
人と野生動物が適切な距離を保ちながら共生できる環境づくりに、まずはできる対策から始めていきましょう。
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